会長挨拶

この度は第49回日本腹部救急医学会総会を平成25年3月13日、14日に福岡国際会議場で開催させていただくこととなりました。大変な栄誉であると同時に責任の重大さに身の引き締まる思いであります。

平成23年3月11日に東日本を襲った未曾有の大地震と想定外の津波は、甚大な被害をもたらし、各方面の努力によっても未だ十分な復興をなしえてはいません。災害救助や救急医療の面からは、全国から自衛隊や日赤、D-MAT, JMATの外、多くの医師がボランティアとして被災地の支援活動に参加しましたが、大自然の力の前に多くの人が個人でやれる力の限界を感じたのではないでしょうか。国全体としての災害救急医療への取り組み、情報伝達システムや、迅速な情報の統合と意思決定の流れ、普段からの教育・訓練のあり方など多くの考えさせられる問題が浮き彫りになったと思います。日常診療においても、救急医療をはじめとする3Kの労働環境の改善と医師不足の改善の必要性が指摘されて久しく、もはや個々の医師の献身的な働きに依存することは不可能な状況であります。東北大震災の教訓を真摯に受け止め、医療システムの改革と同時に、改めて若手医師やコメディカルスタッフの育成が喫緊の課題であると考えています。

本学会総会の基本理念は「若手の登竜門」でありますが、本来「登竜門」とは黄河上流にある急流、すなわち「竜門」を遡ることのできる鯉は竜になるという故事から来ています。正しくしかし厳しい関門を示し、そこを通過することで次の高いステージへと導くことこそが今回の総会における私達の使命ではないかと考えています。一方で多様化し、高度化する救急医療のなかで、従来通り外科医に依存した医療が継続しうるか、は真剣な議論の対象とすべきであり、腹部救急医療の未来像は広い視野と見識を持って模索していくべきものだとも考えています。そこで第49回総会では若手に範を示すとともに、未来への展望を示すべく「エデュケーショナルミーティング‐腹部救急の未来のために」をテーマにしました。この総会を通して腹部救急の未来像、そしてそれに向かって若手医師のモチベーション向上、系統だった教育の提供を行いたいと考え、鋭意準備を行っているところです。

今回開催する福岡の地は交通の便も良く、比較的コンパクトな中にも観光からグルメにいたるまで諸々の魅力が集まっていて皆様の期待を裏切らないものと自負しております。どうか一人でも多くの会員の皆様が来福していただけることを切にお願いしたいと存じます。どうかよろしくお願いします。

第49回日本腹部救急医学会総会
会長 橋爪 誠
九州大学大学院医学研究院 先端医療医学講座 災害・救急医学分野